自宅LANの2.5GbE化はどこまで効くか:スイッチ・NIC・ストレージのボトルネックを整理

Photo: Brett Sayles / Pexels
自宅 LAN を 2.5GbE にすると、ファイルコピーは最大で 1GbE の約 2.5 倍になります。ただしそれは、PC・スイッチ・サーバーの LAN ポートと、読み書きするストレージのすべてが 1GbE より速いときだけです。結論を先に書くと、判断の目安は次の 3 点です。
- 実効速度は 1GbE で約 110MB/s、2.5GbE で約 280MB/s。この差を使い切れるのは SSD か、HDD の読み出し
- 経路上に 1 か所でも 1GbE の機器があれば全体が 1GbE になる。リンク速度の確認と iperf3 の計測で切り分ける
- 効くのは大きなファイルを動かす用途。スマホの写真バックアップや動画配信はほぼ変わらない
2.5GbE で速くなる幅
1GbE の上限は、バイトに直すと 125MB/s です。実際のファイルコピーではオーバーヘッドを引いて 110〜118MB/s あたりに落ち着きます。
2.5GbE の上限は 312.5MB/s です。2.5GbE ポートを持つ NAS のレビューでは、条件がそろったときの転送速度が 280〜290MB/s 程度と報告されています。つまり 2.5GbE 化の中身は、頭打ちの位置を約 110MB/s から約 280MB/s へ引き上げることです。
裏を返すと、読み書きする側が 110MB/s を超えられなければ何も変わりません。どこで詰まるかは、ネットワーク側とストレージ側に分けると整理しやすくなります。
ネットワーク側のボトルネック:NIC・スイッチ・ケーブル
通信速度は経路上でいちばん遅い機器で決まります。PC と NAS が 2.5GbE でも、間のスイッチが 1GbE なら 1GbE です。
NIC(PC とサーバーの LAN ポート)
- デスクトップ PC:最近のマザーボードは 2.5GbE(Intel I225-V / I226-V、Realtek RTL8125 など)を載せたものが多い。古い PC やノート PC は 1GbE が主流
- ミニ PC:N100 クラスでも 2.5GbE を持つ製品が多いが、1GbE の製品もあるので仕様表で確認する
- Raspberry Pi 5:本体の LAN は 1GbE
- 市販 NAS:Synology なら DS224+ は 1GbE のみ、後継の DS225+ は 2.5GbE と 1GbE が 1 ポートずつ
2.5GbE ポートが無い機器には、USB 接続のアダプターで足せます。RTL8156B を使った製品が多く、たとえば I-O DATA ETQG-US3 はメーカー実測で約 2,372Mbps とされています。USB 3.x のポートに挿すのが前提で、USB 2.0 のポートでは 1GbE より遅くなります。
なお、Intel の I225-V / I226-V は、省電力機能(EEE)が有効なときにリンクが切れる症状が各所で報告されています。Linux で症状が出た場合、sudo ethtool --set-eee enp1s0 eee off で EEE を切ると安定したという報告が多いです(インターフェース名は環境に合わせてください)。
スイッチとルーター
見落としやすいのがここです。家庭用ルーターには、インターネット側(WAN)だけ 2.5GbE で、LAN ポートは 1GbE という製品が珍しくありません。PC と NAS をルーターの LAN ポートにつないでいると、1GbE で頭打ちです。
確実なのは、PC とサーバーの間に 2.5GbE のスイッチを置くことです。TP-Link TL-SG105-M2 のように全 5 ポートが 2.5GbE のアンマネージドスイッチがあります。2.5GbE のポートには 1GbE の機器もそのままつながるので、速くしたい機器だけ付け替えれば十分です。
ケーブル
2.5GBASE-T(IEEE 802.3bz)は、カテゴリ 5e のケーブルで 100m まで通信できる規格です。家庭内の距離なら、今の Cat5e / Cat6 ケーブルのまま使えることがほとんどです。例外は無印の Cat5 や、折れ・つぶれのある古いケーブルで、1GbE に落ちてリンクすることがあります。
ストレージ側のボトルネック:HDD か SSD か
ネットワークが 280MB/s 出ても、ディスクが追いつかなければそこで止まります。
| 保存先 | 連続読み書きの目安 | 2.5GbE の効果 |
|---|---|---|
| HDD 1 台(ミラー含む) | 150〜250MB/s 程度 | 1GbE よりは速いが、上限には届きにくい |
| HDD 3〜4 台の RAID5 / RAIDZ1 | 読み出しは 2.5GbE に届くことがある | 読み出しで効く。書き込みは構成次第 |
| SATA SSD | 500MB/s 前後 | 2.5GbE をほぼ使い切れる |
| NVMe SSD | 数 GB/s | 2.5GbE の方が詰まる |
HDD の速度は、容量やモデル、ディスクの外周か内周かで変わります。2.5GbE 化の検証記事でも、NAS からの読み出しは約 2.5 倍に伸びた一方、HDD への書き込みは 1.3 倍程度にとどまったという報告があります。
ファイルの大きさも効きます。小さなファイルを大量にコピーすると、1 ファイルごとの処理時間が支配的になり、回線速度の差は出にくくなります。また、SMB の暗号化を有効にしている場合や CPU が非力な NAS では、CPU が先に詰まることもあるとされています。
自分の環境で確かめる手順
機器をそろえたら、「リンク速度 → ネットワーク単体の速度 → ファイルコピー」の順に見ます。
1. リンク速度を見る
# Linux(サーバー側)。Speed: 2500Mb/s なら OK
ethtool enp1s0 | grep Speed
Windows では PowerShell で Get-NetAdapter | Select-Object Name, LinkSpeed を実行し、2.5 Gbps と出るか確認します。1 Gbps なら、ケーブルかスイッチのポートを疑います。
2. iperf3 でネットワークだけの速度を測る
# サーバー側
iperf3 -s
# PC 側(-R で逆方向も測る)
iperf3 -c 192.168.1.10
iperf3 -c 192.168.1.10 -R
2.3Gbits/sec 前後が出ていれば、ネットワークは本来の性能を出せています。iperf3 はディスクを使わないので、ここが遅ければ NIC・スイッチ・ケーブル・USB ポートのどれかです。
3. 実際のファイルコピーと比べる
iperf3 は速いのにコピーが 150MB/s 前後で止まるなら、上限はストレージです。HDD の NAS ならそれが普通の結果なので、無理に追いかける必要はありません。
効く用途、効かない用途
私の考えでは、2.5GbE 化で体感が変わるのは次のような用途です。
- PC のイメージバックアップや、Proxmox の VM バックアップを別の機器へ送る
- 動画素材や ISO イメージなど、数 GB のファイルを NAS とやり取りする
- SSD を積んだ NAS やサーバーのデータを PC から直接扱う
逆に、次の用途ではほぼ変わりません。
- スマホの写真バックアップ(Wi-Fi 側が遅い)
- Jellyfin などの動画配信(4K でも 1 本あたり数十〜100Mbps 程度とされる)
- Home Assistant や AdGuard Home など、通信量の小さいサービス
- インターネットの速度(回線が 1Gbps 契約なら上限は変わらない)
最初から家じゅうを 2.5GbE にする必要はありません。サーバー(NAS)とメインの PC、その間のスイッチの 3 点をそろえれば、効果の大半は得られます。
まとめ
- 2.5GbE 化で上がるのは上限。実効で約 110MB/s → 約 280MB/s
- 経路上に 1GbE の機器が 1 つでもあれば 1GbE になる。ルーターの LAN ポートに注意
- ケーブルは Cat5e で規格上 100m まで対応。USB アダプターは USB 3.x のポートに挿す
- HDD 1 台やミラーの NAS はディスクが先に詰まる。SSD や複数台の RAID で差が出る
ethtool/Get-NetAdapterでリンク速度、iperf3 でネットワーク単体の速度を測って切り分ける- まずはサーバー・メイン PC・2.5GbE スイッチの 3 点だけで十分
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