家族用NASはSynologyを買うか自作(OpenMediaVault / TrueNAS)か:判断基準を整理

Photo: Arina Krasnikova / Pexels
先に結論です。2026年9月に「家族に使わせる NAS」を1台目として作るなら、私は Synology の完成品を勧めます。 理由は「自作より安いから」ではありません。逆で、2026年は自作の価格優位がほぼ消えたうえに、「家族用」という条件が、自作最大の利点である自由度をほとんど価値に変えてくれないからです。
ただし自作を選ぶべき条件も1つだけあります。その NAS を家族用ストレージだけでなく「自分の検証環境」としても使いたい場合です。ここが混ざったままだと結論が出ないので、先に切り分けます。
判断軸は3つ:総額・止まったとき誰が直すか・出口
家族用の1台目で効くのは、次の3つだけだと思います。
- 総額:本体だけでなくディスクまで含めた金額
- 止まったとき誰が直すか:あなたが不在のあいだに壊れたら誰が対応するか
- 出口:やめたくなったとき、データを次へ移せるか
2番目は意外と語られませんが、家族用にした瞬間、その NAS は「家族の共有インフラ」になります。あなたの出張中にディスクが1本落ちたとき、電話で家族に交換を頼めるか。Synology なら前面のトレイを抜いて挿すだけで済み、通知もアプリに届きます。自作で同じ状態を作るには UI と手順書を自分で用意する必要があり、その気がないなら完成品のほうが誠実だと思います。
3番目は期待しすぎないほうが安全です。Synology の SHR も mdadm や ZFS のプールも、「別の機械に挿せばそのまま読める」とは限りません。出口を確保する確実な方法は別媒体へのバックアップだけで、NAS 選びとバックアップ先選びはセットで決めてください。
2026年、自作の価格優位はほぼ消えた
HDD が上がっています。Seagate IronWolf 8TB は2026年1月10日の33,779円から7月18日には48,736円と、約44%上昇したと報告されています。WD Red Plus 8TB も2026年8月末で48,800円前後、1TB あたり6,100円前後の水準です。AI データセンター向けの大容量 HDD に生産枠が移ったことが背景とされています。
メモリはさらに極端で、2025年10月上旬に1万円以下だった DDR5 16GB×2 が2026年1月末には39,800円という報告があります。2026年9月時点でも上流は高値圏とされています。
この2つで構図が変わりました。2ベイを8TB×2 で組むと、ディスクだけで10万円近くになります。 本体が6万円か3万円かの差は、総額の中では以前ほど大きくありません。しかも自作側はメモリとシステム用 SSD を別に買う必要があり、そこが高騰の直撃を受けます。
以前は自作の理由になっていた「純正 HDD が高い」も弱くなりました。純正の HAT3300 8TB は48,800円前後で、上の WD Red Plus 8TB とほぼ同水準です(2026年8〜9月時点。価格は変動します)。
Synology を選ぶなら、ドライブの条件だけは自分で確認する
家族用の1台目なら、2ベイの Synology DiskStation DS225+ が素直だと思います。Intel Celeron J4125(4コア)、メモリ2GB(最大6GB)、2.5GbE ポート搭載、ハードウェア保証3年(延長で最長5年)で、本体のみの実売は6万円台とされています。4ベイなら2025年5月発売の Synology DiskStation DS425+(同じ J4125、M.2 NVMe スロット2基)で、10万円台前半の水準です。
確認してほしいのがドライブの互換性方針です。2025年モデルの Plus シリーズでは当初、互換性リスト掲載のドライブでないと DSM のインストールやストレージプール作成ができない仕様が導入されました。その後2025年10月の DSM 7.3 で方針が変わり、Plus / Value / J シリーズではリスト未掲載のサードパーティ製 HDD と2.5インチ SATA SSD でも使えるようになったとされています。ただし M.2 NVMe SSD は対象外で、ストレージプールやキャッシュの作成は互換性リスト掲載ドライブに限られるとされています。
言いたいのは方針の良し悪しではなく、メーカーの方針は買ったあとに変わりうるという一点です。買う前に、挿す予定の型番がその時点の互換性リストにあるかを公式ページで確認してください。あわせて Synology のライフサイクルポリシー(完全更新/セキュリティ更新のみ/サポート終了)で、そのモデルの位置も見ておくべきです。
自作するなら OpenMediaVault か TrueNAS か
OpenMediaVault は Debian ベースで、2025年12月24日に Debian 13(Trixie)ベースの OMV 8「Synchrony」が出ています。64bit のみの対応で、amd64 のほか Raspberry Pi 4 / 5 の arm64 でも動きます。普通の Debian に Web UI が乗っているだけなので見通しが良く、Docker を同居させやすいのが利点です。
TrueNAS は ZFS が中心です。2025年10月末に 25.10「Goldeye」が出て、25.10.1 以降が安定版として扱われています。次期版の TrueNAS 26 は2026年4月に BETA 予定とされていました。スナップショットとデータ整合性が欲しいなら候補ですが、メモリを積む前提になるぶん、2026年の価格では不利です。
ハードは、ミニPC に USB 外付けを足すより、ディスクを内蔵できる筐体のほうが安定します。UGREEN NASync DXP2800(DDR5 8GB、2.5GbE、M.2 スロットあり)が5万円前後という価格が確認できます。完成品 NAS ですが x86 なので、後から OS を入れ替える余地がある点で自作寄りの選択肢です。
自作を選ぶ最大の理由は、繰り返しますが家族用ストレージ以外の用途があるときです。Proxmox で検証 VM を回したい、Jellyfin や Immich を自分で育てたい、といった目的があるなら自作で構いません。家族の写真を置くだけなら、自由度に払う対価(あなたの時間)は回収できないと思います。
まとめ
- 判断軸は総額・止まったとき誰が直すか・出口の3つ。機能表を見るのはそのあと
- 2026年は自作の価格優位がほぼ消えた。8TB は1TBあたり6,100円前後、メモリは1年で数倍という報告。ディスク代が総額を支配する
- 純正 HDD と WD Red Plus / IronWolf の価格差も縮んだ。「純正が高いから自作」は今は弱い
- Synology は DSM 7.3(2025年10月)でサードパーティ HDD の制限が緩和。ただし M.2 NVMe は互換性リスト限定のまま
- 自作なら扱いやすい OMV 8、ZFS が欲しいなら TrueNAS 25.10(メモリ代が乗る)
- 家族用ストレージ「だけ」なら Synology、検証環境を兼ねるなら自作
どちらを選んでも RAID はバックアップではありません。2台構成にした時点で安心してしまうのが家族用 NAS のいちばん怖いところです。外付け HDD かクラウドへの二重化まで、最初の週末に決めてしまうことをお勧めします。
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