先に結論です。この引っ越しの成否は、インストール手順ではなく「バックアップの暗号化キー」「Zigbeeドングルの渡し方」「VMのディスクサイズ」の3点で決まります。 インストール自体はスクリプト1行で終わります。詰まるのはその後です。

2026年9月時点で、Proxmox VE の最新は 9.2(2026年5月21日リリース、Debian 13.5 “Trixie” ベース)、Home Assistant OS は 18.2 です。

その引っ越し、本当に必要か

先に反対側から書きます。VMに移すと、家じゅうの照明とセンサーがハイパーバイザー1台に依存します。 ホストのカーネル更新のたびに家族へ断りを入れる作業が発生します。それでも移す価値があるのは、更新前にスナップショットを取って数十秒で戻したい、microSDの寿命が不安、他のサービスと1台に同居させたい、のいずれかに当てはまるときです。

インストール方式は HAOS / Supervised / Container / Core の4種類ありますが、アドオンとSupervisorが正式に使えるのは HAOS だけです。ラズパイからの引っ越しなら素直に HAOS を選んでください。

ハードは N100 / N150 クラスのミニPCで足ります。この世代はアイドル6〜10W程度とされており、24時間運転が現実的です。Beelink MINI S13 のようなN150・16GB構成が扱いやすいと思います(価格は変動します)。

VMを作る:スクリプトか手動か

一番速いのは、Proxmoxのホストシェルで community-scripts のヘルパースクリプトを叩く方法です(tteck氏のスクリプト群が現在はコミュニティチーム管理に移っています)。

bash -c "$(curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/community-scripts/ProxmoxVE/main/vm/haos-vm.sh)"

デフォルトは 2 vCPU / 4096MB / 32GB です。この32GBを、ここで増やしておいてください。 後からProxmox側で広げてもHAOS側のパーティションが素直に追いてこないことがあり、フォーラムには1000件超のスレッドが立っています。最初から64GB程度にしておくほうが安上がりです。

手動なら、公式のKVM/Proxmox用イメージ(haos_ova-18.2.qcow2.xz)を展開してインポートします。qm importdiskqm disk import のエイリアスなので、どちらでも動きます。

qm create 100 --name haos --memory 4096 --cores 2 --net0 virtio,bridge=vmbr0
qm disk import 100 haos_ova-18.2.qcow2 local-lvm

手動で必ず引っかかるのがファームウェアです。公式は UEFI(OVMF)を選び、securesecboot を含まないセキュアブート無効版を選ぶよう明記しています。BIOSのままでは起動しません。

もう一点、VMのオプションでQEMU Guest Agentを有効化します。HAOSにはエージェントが同梱されているので追加インストールは不要です。有効にするとIPが表示され、シャットダウンもきれいに通ります。

バックアップを持ち込む:暗号化キーが本体

ここが最大の罠です。2025.1のバックアップ刷新以降、バックアップは暗号化キーで守られています。 キーは初回設定時に自動生成され「緊急キット」としてダウンロードできますが、Nabu Casaはこのキーを保管しておらず、紛失した場合の復号手段はありません。

  1. ラズパイ側で暗号化キーを先にダウンロードして保存する
  2. 「設定 → システム → バックアップ」でフルバックアップを作り、.tar を手元に落とす
  3. 新しいVMを起動し、オンボーディング画面まで進める
  4. アカウント作成ではなく「バックアップをアップロード」を選び、キーを入れて復元する

復元でオートメーション・連携・ダッシュボード、そしてZigbeeのデバイスDBが戻るとされています。ラズパイはまだ消さないでください。

Zigbeeドングルの引っ越しとUSBパススルー

挿し替えるだけではVMから見えません。「ハードウェア → 追加 → USBデバイス」で明示的に渡します。指定方法は2つありますが、挿すポートを変えても設定が生き残るベンダー/デバイスID指定を選んでください。ホストで lsusb してIDを調べ、CLIならこう書きます。

qm set 100 -usb0 host=1a86:55d4

追加後は再起動ではなく完全にシャットダウンしてから起動します。初回はこれをしないと認識されないことがあります。

物理的な話も1つ。USB 3.0ポートは2.4GHz帯にノイズを出し、Zigbeeを不安定にします。 前面USBに直挿しでセンサーが落ちるのはよく報告される症状で、対策は 1m以上のUSB 2.0延長ケーブル で本体から離すだけです。

ドングルを新調するなら、公式の現行モデルは Home Assistant Connect ZBT-2 です。旧「SkyConnect」は2024年に Connect ZBT-1 へ改称され、その ZBT-1 も生産終了(ソフトウェアサポートは継続)と案内されています。サードパーティなら SONOFF ZBDongle-P が定番です。

ただしコーディネーターの載せ替えは引っ越しとは別作業です。まずは今のドングルをそのまま挿し替えてください。同時に2つ変えると切り分けができなくなります。

引っ越し後に詰まりやすいところ

  • デバイスが自動検出されない: 自動検出はmDNS/SSDP頼みで、VLANを越えません。VMが物理NICにブリッジ(vmbr0)され、IoT機器と同じL2・同じVLANにいるか確認します。スイッチのIGMPスヌーピングが原因のこともあります
  • IPが変わって連携が切れる: ルーターのDHCP予約で固定します
  • ホスト再起動後に上がってこない: VMの「オプション → 起動/シャットダウン順序」で「起動時に開始」を有効に。忘れると停電復帰後に家が沈黙します
  • Proxmoxのバックアップがあるから安心、ではない: VMスナップショットは箱ごとの保険で、HA内部の設定を部分的には戻せません

まとめ

  • アドオンを使うなら HAOS 一択。ただし「ホスト再起動=家の自動化が全停止」は先に納得しておく
  • 2026年9月時点の組み合わせは Proxmox VE 9.2 + HAOS 18.2。ディスクは最初から余裕を持って取る
  • 手動ならセキュアブート無効のOVMF、VMオプションでQEMU Guest Agentを有効化
  • 引っ越しの本体はバックアップの暗号化キー。ラズパイを消す前に緊急キットを保存する
  • Zigbeeドングルはベンダー/デバイスID指定でパススルーし、追加後は完全停止→起動。USB 2.0延長ケーブルで本体から離す

ラズパイは、動作確認が終わるまで消さずに置いておいてください。戻れる状態を残しておくのが、家族用インフラを触るときの最低条件だと思います。


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