先に結論です。2026年9月現在、この構成を作るなら入れるのは OpenMediaVault 7 ではなく OpenMediaVault 8 です。 「ラズパイ NAS OMV7」で出てくる記事の手順をそのままなぞると、現在のRaspberry Pi OSでは途中で止まります。

もうひとつ先に言っておくと、ラズパイ5のNASは「速さ」で選ぶものではありません。有線LANが1ギガビット1本なので、NVMeがどれだけ速くても実効は100MB/s前後で頭打ちになります。それでも私がこの構成をすすめるのは、消費電力が小さく、静かで、置き場所を選ばないからです。家族の写真を置く常時稼働の箱としては、そこが効きます。

2026年の前提:OMV 7ではなくOMV 8を入れることになる

まずここを押さえないと手順が噛み合いません。

OpenMediaVault 8(コードネーム Synchrony)は2025年12月24日にリリースされ、ベースがDebian 13(Trixie)に上がりました。同時に64bit専用となり、arm64のラズパイ4/5がサポート対象です。

一方のRaspberry Pi OSも2025年10月にTrixieベースへ切り替わり、現在Raspberry Pi Imagerで普通に選ぶと入るのはTrixieです。そしてomv-extrasのwikiには、OMV 7についてはっきり「Debian Trixieは現時点でOMV7ではサポートされていない」と書かれています。

つまり2026年9月時点の組み合わせはこうなります。

Raspberry Pi OS入るOMV
Trixie(現在の標準)OMV 8
Bookworm(旧版)OMV 7

インストールスクリプトは現行のOMVリリースしか面倒を見ないので、素直にTrixie + OMV 8で組むのが正解です。すでにOMV 7で運用している場合は omv-release-upgrade でアップグレードする道が用意されているとされています。

用意するもの:公式M.2 HAT+に2280は載らない

ここが一番の落とし穴なので、買う前に読んでください。

Raspberry Pi M.2 HAT+が対応するM.2の形状は 2230と2242だけです(Compact版は2230のみ)。PC用として一般的に売られている1TB・2TBのNVMe SSDはほぼ2280なので、そのままでは物理的に載りません。M.2 HAT+側からSSDへは最大3Aまで供給できる仕様です。

対処は二択です。

  • 2230/2242のSSDを買う: 公式の Raspberry Pi SSD Kit 512GBは、SSDがM.2 HAT+に取り付け済みで届くので配線ミスの余地がありません。スイッチサイエンスで税込10,670円という販売例があります(2026年9月時点、変動します)
  • 2280対応のサードパーティ基板を使う: Pimoroni NVMe Base、Geekworm X1001、Waveshare M.2 SSD HAT+ などが2280に対応しています。手持ちのSSDを流用したい、容量単価を下げたい場合はこちら

本体は Raspberry Pi 5 8GBで十分です。ただし2026年はDRAM高騰で価格が3度改定されており(2025年12月・2026年2月・2026年4月)、スイッチサイエンスでは8GB版が税込36,300円という値付けになっています。16GB版は6万円台の販売例もあります。NAND側も2026年は品薄で、1TBクラスのNVMeが前年比で2倍以上になった例が報告されています。予算感は「以前見た記事の倍」で見積もってください。

電源は Raspberry Pi 公式 27W USB-C 電源アダプターを使ってください。SSDを足すと消費電流が増えるので、スマホ用の余っているアダプターで済ませると起動が不安定になりがちです。常時稼働させるなら Raspberry Pi アクティブクーラーも付けておくと安心です。

インストール手順:OS Lite → OMV → NVMe起動の順で

順番を守るのが大事です。先にraspi-configをいじると失敗します。

1. Raspberry Pi OS Lite(64bit)を焼く

Imagerで「Raspberry Pi OS Lite (64-bit)」を選びます。デスクトップ版はサポート対象外です。詳細設定でSSHを有効化し、ユーザー名とパスワードを決めておきます。

2. 有線LANで繋いでSSHログイン

インストールには有線LANとインターネット接続が必要です。無線を事前設定しないよう、wiki側でも明確に注意されています。

3. 事前準備スクリプトを実行

sudo apt-get update
sudo apt-get upgrade -y
wget -O - https://github.com/OpenMediaVault-Plugin-Developers/installScript/raw/master/preinstall | sudo bash

4. 本体をインストール

wget -O - https://github.com/OpenMediaVault-Plugin-Developers/installScript/raw/master/install | sudo bash

完了まで数分かかり、途中で再起動します。終わったらブラウザでラズパイのIPアドレスを開くとOMVのログイン画面が出ます。初期認証は admin / openmediavault です。ここは最初のログイン直後に変更してください。

5. NVMeから起動するように切り替える

microSDから起動している状態なら、sudo raspi-config → Advanced Options → Boot Order → NVMe/USB Boot で変更できます。コマンドで書きたい場合は sudo rpi-eeprom-config --edit を開いて BOOT_ORDER=0xf416 にします。この値は右から読んで「NVMe → SDカード → USB、全部だめなら再試行」の意味です。

なお、NVMeは既定ではPCIe 2.0(ピーク500MB/s)で動きます。dtparam=pciex1_gen=3/boot/firmware/config.txt に書けばGen 3を試せますが、ラズパイ5はGen 3の認証を取っておらず不安定になり得ると公式ドキュメントが明記しています。前述のとおり1GbEで頭打ちになるNASでは、体感差はほぼありません。私は既定のままをすすめます。

家族用NASとして使うまでと、単一SSD構成の落とし穴

Web UIに入ったあとの流れは、ストレージ→共有→サービスの順です。

  1. ストレージ → ファイルシステム でSSDにext4のファイルシステムを作り、マウントする(単一ディスクならext4が扱いやすいです)
  2. ストレージ → 共有フォルダ で共有フォルダを作る
  3. ユーザー で家族用のアカウントを作り、共有フォルダの権限を与える
  4. サービス → SMB/CIFS でサービスを有効化し、共有を追加する
  5. 画面上部に出る保留中の変更バナーで「適用」を押す(これを押し忘れて「設定したのに繋がらない」となる人が多いです)

Windowsからは \\ラズパイのIP、Macからは smb://ラズパイのIP でアクセスできます。

さて、単一NVMe構成で必ずぶつかるのがこれです。OMVは既定でOSが入っているディスクを共有フォルダに使えません。 NVMe 1枚にOMVを入れて「そのSSDを共有したい」と思っても、ファイルシステムの一覧に出てきません。

回避策は3つあります。

  • omv-extrasの sharerootfs プラグインを入れる: OSディスクのルートにも共有フォルダを作れるようになります。ただしルートファイルシステムがbtrfsだと表示されない不具合が報告されているので、ext4にしておくのが無難です
  • microSDから起動してNVMeを丸ごとデータ用にする: 一番素直です。速度は落ちますが、OSディスクとデータディスクが分かれるので運用が単純になります
  • NVMeをパーティション分割する: OS用とデータ用に分けます

もうひとつ、忘れてはいけないのがバックアップです。SSD 1枚のNASには冗長性がありません。 RAIDでもないので、SSDが壊れたら家族の写真は消えます。USB 3.0ポートに外付けHDDを繋ぎ、OMVのrsyncジョブで定期コピーする程度は最低限やっておいてください。

まとめ

  • 2026年9月現在、ラズパイ5に入れるのはOMV 7ではなく OMV 8(Raspberry Pi OS Lite 64bit / Trixie)
  • 公式M.2 HAT+は 2230/2242専用。手持ちの2280 SSDを使うならサードパーティ基板が必要
  • インストールはpreinstall → installの2本のスクリプト。初期ログインは admin / openmediavault
  • NVMe起動は raspi-config か BOOT_ORDER=0xf416。Gen 3化は非認証かつ1GbEで頭打ちなので不要
  • 単一SSD構成では「OSディスクを共有に使えない」制限と、バックアップ不在の2点を先に決めておく

2026年は本体もSSDも値上がりしていて、正直「安く作れるNAS」ではなくなりました。それでも省電力・静音・省スペースという価値は変わりません。速度が欲しい人はN100ミニPCという選択肢もある、という前提で選んでください。


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