先に結論です。Proxmox Backup Server(以下PBS)は、PVEホストに同居させず、別のミニPC1台を専用のバックアップ先にしてください。 公式ドキュメントも「バックアップサーバーをハイパーバイザー上に直接インストールすることは推奨しない。バックアップを別の物理サーバーに置くほうが安全で、ハイパーバイザーが故障してもバックアップにアクセスできる」という趣旨をはっきり書いています。同じ箱に置いた瞬間、それはバックアップではなく単なるコピーです。
2026年9月時点の最新版は PBS 4.2(2026年4月29日リリース、Debian 13.4 “Trixie” ベース)です。この記事はPVE 9系と組み合わせる前提で進めます。
用意するもの:ミニPC本体と、VMとは別のディスク
PBSの公式要件は、最小が64bit CPU 2コア以上・RAM 2GB・空き8GB超。推奨は4コア以上、RAM 4GiB+データストア1TiBあたり1GiB追加、OS用に32GiB以上です。家庭で数台のVMを守る用途なら、N100クラスのミニPCで足ります。
| 用途 | 目安 |
|---|---|
| CPU | N100クラス(4コア)で十分 |
| RAM | 16GB(8TBのデータストアなら余裕を持って) |
| OS用ディスク | 本体内蔵のNVMe 256GB以上 |
| データストア | 別ディスク。SATA/USB接続の3.5インチHDD |
本体は Beelink Mini S12 Pro のようなN100・16GB構成が扱いやすく、2026年9月時点で2万円台後半からの販売例があります(変動します)。
データストアは容量が要るのでHDDです。WD Red Plus 8TB や Seagate IronWolf 8TB といったNAS向けモデルが定番です。ただし2026年はAI向けデータセンター需要でHDDが大きく値上がりしており、8TBクラスで3万円台後半〜4万円台という実売例が報告されています。以前の相場感で予算を組むと足が出ます。
なお公式が推奨するのはエンタープライズSSD、HDDならZFSのspecial deviceなどメタデータキャッシュの併用とされています。自宅規模ならHDD単体でも動きますが、推奨構成ではないと理解した上で選んでください。
インストールとデータストアの作成
公式ISOをUSBに焼いて起動し、インストール先・タイムゾーン・rootパスワード・IPを設定します。PVEのインストーラとほぼ同じ流れで、IPは固定にしてください。
再起動したらブラウザで https://<PBSのIP>:8007 を開きます。PVEの8006ではなく8007です。ユーザーは root、Realmは Linux PAM standard authentication です。
サブスクリプション無しで更新を受け取るには、リポジトリを切り替えます。PBS 4はdeb822形式です。
cat > /etc/apt/sources.list.d/proxmox.sources << 'EOF'
Types: deb
URIs: http://download.proxmox.com/debian/pbs
Suites: trixie
Components: pbs-no-subscription
Signed-By: /usr/share/keyrings/proxmox-archive-keyring.gpg
EOF
apt update && apt full-upgrade -y
次にデータストアです。Web UIなら「Datastore → Add Datastore」、CLIならこう書きます。
proxmox-backup-manager datastore create store1 /mnt/backup/store1
proxmox-backup-manager datastore list
パスはHDDをマウントした先です。ディスクの初期化とマウント自体は「Administration → Storage / Disks」から実行できます。
PVE側から繋ぎ、毎晩02:00のジョブを組む
まずPBS側で証明書のフィンガープリントを取ります。自己署名証明書のままならPVE側に登録が必要です。
proxmox-backup-manager cert info | grep Fingerprint
PVEのWeb UIで「データセンター → ストレージ → 追加 → Proxmox Backup Server」を選び、サーバーのIP・データストア名・ユーザー・パスワード・フィンガープリントを入れます。CLIなら pvesm add pbs <ID> --server <IP> --datastore store1 --username <ユーザー> --fingerprint xx:xx:... --password ... です。
ここで root@pam をそのまま使わないのがおすすめです。PBS側に専用ユーザーとAPIトークンを作り、DatastoreBackup ロールだけを与えます。このロールはバックアップの作成はできても削除ができないため、PVE側が乗っ取られてもバックアップを消される事故を防げるとされています。ロールはユーザーとトークンの両方に付与する必要がある点に注意してください。
proxmox-backup-manager acl update /datastore/store1 DatastoreBackup \
--auth-id 'pve@pbs!token1'
あとは「データセンター → バックアップ → 追加」でジョブを作ります。スケジュール欄はsystemdのカレンダーイベント形式です。毎晩2時なら 02:00、平日だけなら mon..fri 02:00。書式に自信がなければ、同じ画面の Schedule Simulator で次回実行日時を確認できます。
モードは snapshot を選んでください。stopモードはVMを停止するため、QEMUが持つdirty bitmapが失われます。このbitmapがあるおかげで2回目以降は変更ブロックだけを読めばよく、劇的に速くなります。初回や、VM再起動・ホスト再起動・ライブマイグレーションの直後は全ブロックを読み直すので時間がかかりますが、異常ではありません。
prune・GC・verifyの役割分担
ここを知らないと「保持世代を絞ったのに空き容量が増えない」で必ず詰まります。
- prune: 保持ポリシー(keep-last / keep-daily / keep-weekly / keep-monthly / keep-yearly)に従ってスナップショットを削除します。ただし消えるのはインデックスだけで、実データのチャンクは残ります
- garbage collection(GC): 参照されなくなったチャンクを実際に削除します。空き容量が増えるのはこちら。週1回の実行が一般的とされています
- verify: 保存済みバックアップの整合性を検証します。公式は、検証済みのものも含めて最低でも月1回は再検証することを強く推奨しています
GCには猶予があり、最終アクセスから 24時間5分より新しいチャンクは削除されません。バックアップ中に書かれたばかりのチャンクを巻き込まないための仕様です。GC直後に容量が減らず「Pending Removals」と表示されるのはこれが理由なので、翌日もう一度確認してください。
最後に3-2-1です。ミニPCのPBSは「別の箱」ではありますが、まだ同じ家の中にあります。PBS 4系ではUSB接続のリムーバブルデータストアが正式にサポートされ、ドライブをマウントした瞬間に同期を走らせて自動でアンマウントする運用が組めます。裸族のお立ち台 のようなHDDスタンドに月1回だけ挿し、外して別の場所に置く。それだけで「1つはオフサイト」に近づきます。
まとめ
- PBSはPVEと同居させない。公式も非推奨としており、専用のミニPC1台を用意するのが正解
- 2026年9月時点の最新は PBS 4.2(Debian 13.4ベース)。RAMは4GiB+データストア1TiBあたり1GiB
- Web UIは 8007番。リポジトリはdeb822形式で
pbs-no-subscriptionに切り替える - PVE側の接続には
proxmox-backup-manager cert infoのフィンガープリントが要る。root@pamではなく DatastoreBackupロールのAPIトークンを使う - ジョブは
02:00などのカレンダー形式、モードは snapshot(dirty bitmapを維持するため) - prune=インデックス削除、GC=実データ削除。容量が減らないときはGCと24時間5分の猶予を疑う
2026年はHDDが高く、バックアップ用ディスクが一番の出費になりました。それでも、VMを消してから後悔するよりは安い買い物です。
運営者が作った Excel テンプレートを BOOTH で配布しています。IT 資産管理台帳(無料 Lite 版あり) / IT 資格の学習管理シート